2012年 第07戦 カナダGP

アメリカ時間へようこそ。
こういう時間に見るのはインディカーで慣れてはいますけど、眠いのは眠いですよね。

ハミルトンがアロンソベッテルとの接戦を制し今季初勝利。相変わらず味方にピットで足を引っ張られたが、今回はそれごと力でねじ伏せた。今期最も安定しているドライバーの一人であることは疑いようがない。チームは不安定だが……
一方のバトンは苦戦が続く。トラブルでFP1、FP2とほとんど走りこめなかったことが響いてか、まったく速さを引き出せず屈辱の周回遅れでのフィニッシュ。開幕戦の優勝者は、過去4戦で2ポイントしか取れていない。

グロジャンが攻撃的な1ストップ作戦を見事に機能させ、2位表彰台を獲得。ソフトタイヤで50周にわたる第2ステイントをタイムの下落なく走りきった。ソフトタイヤの理論上のライフが45周であったことを考えれば驚異的。
ライコネンはグロジャンとは逆にソフトタイヤで発進し第1ステイントを長く取る戦略を取ったが、いま一つレースペースが不足していた。同様の戦略を取ったザウバーのペレスに完敗する。

ペレスが3位に入り、今期2度目の表彰台を獲得。ドライコンディションでも力を見せ付けた。戦略がよかったこともあるが、その戦略をしっかり機能させたのは何よりペレスの力である。第2ステイントのスーパーソフトでのラップは印象的だった。
可夢偉はスーパーソフトでスタートして1ストップ戦略を取ったが、第2ステイントで延々とディレスタにつき合わされ大幅にタイムを失った。戦略というか、ピットタイミングの問題ではあるが、フィニッシュラインで最高速を記録したクルマでもトラフィックから抜け出すことが出来なかった。

32回目のポールポジションを獲得したベッテルだったが、ハミルトンの方が純粋にレースペースが上だった。アロンソと共にかなりハイリスクな(無謀とも思える)変則1ストップ戦略を試みるも、あえなく崖下に転落。だが、タイヤが駄目になったと見るや、残り7周という状況でも2回目のピットを敢行、これがダメージを最小限に抑えるポイントとなった。グロジャンとペレスには先行を許したものの、崖下で走り続けたアロンソをパスし、4位フィニッシュ。
ウェバーは2ストップ戦略を取ったが、1回目のストップ後に1ストップのライコネン、ペレス組の後塵を拝し、戦略を機能させることができなかった。フィニッシュラインの最高速が下から5番目のクルマでは、トラフィックを抜けるのは難しいだろう。

アロンソはAll or nothingなギャンブルでみすみす表彰台を逃した。崖の下で5位入賞。アロンソは戦略ミスではないとチームを庇ったが、タイヤの理論限界(45周)を大幅に超える第2ステイント(52週)を走って、案の定(ちょうど45周目に)崖から落ちたのを戦略ミスと言わず何と言うのか。確かにグロジャンは50周を走破したが、別のクルマを持ち出しても大した意味はない。とはいえ、1回目のピットストップを「遅らせて」ハミルトン、ベッテルの前に出た手腕はさすがの一言。ハミにはタイヤが温まる前にさくっと抜き返されたが…
マッサは序盤からハイペースで走行したあと単独スピンを喫し、自らレースを(そして下手をすれば自身のキャリアをも)破壊した。長い間眠りについていたマッサは知らなかっただろうが、ピレリタイヤに支配された今のF1では、あのような積極的な攻撃は自滅に繋がる道なのだ。その後はアロンソのためにタイヤライフを見るための人柱にされ(そして残念なことにそれが参考にされることもなかった)、少なくともポジションを1つ失った。それでも1点を持ち帰ったのだからフェラーリの戦闘力向上は注目に値する。

ロズベルグは燃料不足の心配があったらしく、序盤のペースはイマイチだったが、レース中盤からは勢いを取り戻した。最後は崖に落ちたアロンソに0.4秒差まで詰め寄るも、惜しくも時間切れ、6位に留まる。
シューマッハは今日はDRSが開きっぱなしになるという聞いたことのないトラブルによりリタイヤ。今期シューミが取りこぼしたポイントがまたもや加算された。どう見てもお祓いが必要です。

  • フォースインディア

予選では印象的なスピードを見せ、ディレスタがQ3進出を果たしたものの、レースペースはガタガタだった。両者ノーポイント。

前々から思ってはいたが、ベルニュの遅さは筆舌に尽くしがたい。新人とは言え、同じ新人のチームメイトに1秒以上離され、ケータハム2台にすら及ばずQ1落ちするなど話にもならない。トロロッソなので早々に首が飛ぶことはないとは思うが…

  • まとめ

今期はドライバー同士の戦いではなく、ドライバーとタイヤとの戦いのシーズンであることがより明確になってきた。カナダGPは、ハミルトンがアロンソベッテルに打ち勝ったレースではない、アロンソベッテルがタイヤに負けたレースだ。
積極的なアタックはタイヤを急激に磨耗させるため、賢明なドライバー達は確実に抜けるポイントが来ない限りトラフィックの中でタイヤをいたわり続ける。だが、ウェバーが言うように、トラフィックの中に留まることで戦略が破綻することにもなる。
トラフィックと無縁でいられるドライバーは、スタートで第1コーナーを先頭で駆け抜けた数台だけだ。先頭を走るドライバーは自分のペースで走ることができ、そのすぐ後ろにつけることができた数台には、コース上あるいはピットタイミングで先頭を奪う機会を与えられる。
トラフィックを抜ける手段として、戦略を切り替えてしまうという手もあるが、どうも今回のアロンソベッテル(当初2ストップを1ストップに変更しようとして崖から落ちた)、そして可夢偉(当初2ストップを1ストップに変更してトラフィックにつかまった)を見る限り、うまくいく確率は低そうだ。融通の利かないタイヤがそれを許さない。
結局のところ、当初の戦略とトラフィックの状況がうまくマッチした幸運なドライバーが、上位進出を果たすことになるのだ。

さて、今期は7戦が終わって7人の勝者が生まれたわけだが、次戦で8人目の勝者が現れることはあるだろうか。未勝利で、勝てる力を持ったドライバーは、シューマッハライコネン、グロジャン、可夢偉、ペレス。…仕方ない、マッサも入れておこう。この6人だ。
さすがに7人も勝者がいると、そろそろ2勝目を上げるドライバーが出てきてもいい頃合だが、果たしてどうなるか、予測は困難だ。ヨーロッパGPも、様子を見よう。

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